身近なお話

私の感想文
それは、過去だったり、現在だったり、少しだけ先に見えるものだったり

フーテンの虎とプ―太郎

癒し系に猫の話題が沸騰している昨今に、ふと思い出して吹き出すお話です


それは、背中にサルの絵柄を付けた一匹の雄の飼い猫が
我が家の塀を、昼寝場所に決め込んでしまったようです
「おまえさんさ~、のんきに昼寝場所に決め込んでいるようだけれど」
キジトラ模様の、こちらも飼い猫が、妬ましく怒鳴るんです
が、そのさる模様の猫ときたら、全く意を解さない
それどころか
「なんだ、なんだ、俺様に意見でもしようってか?」
と、言ったかは定かでは無いが、この出逢いが、後々の相性の悪い原因だったようです


サル模様の猫の名前は「プー」
白地にキジトラ模様を施している、サルが塩梅よくお座りをしている様
それが背中を占めているのです(見れば、見る程、サルが今にも動きそう)
飼い主さんいわく「縁起のいい模様ですよ」
縁起が何故いいのか、解りませんが、プーが背中を立てると
背中のサルも何故か威嚇して見える
この文様に、怖気づいたか?と虎に尋ねると
「な~に、あれしきの文様、何処にでもあるさ~」と嘯く(笑)


それからというもの、これ見よがしに塀越しに我が家を見下ろして
虎にちょっかいを出すようになる
一日の殆どを外でプラプラしているその猫の事を
我が家では「プー太郎」とあだ名をつけてやった(笑)
「そうさ、あれでも飼いネコだって、笑わせるよな」と虎は胸を張るのだが
やはり、プー太郎の、何処でもドアには憧れが隠せないらしい


今日も
「おっす・・虎とやら、天気がいいのに、家の中とはお気の毒」
プー太郎がいつもの塀から声を掛けているらしい
虎も負けじと窓越しから一声
「ウワオー・・ウー」
思い切り背中を立てて威嚇するが、何しろ籠の鳥では、勝負にならない


その様子を隣でみているコテツは
「ばかばかしい、あほくさ・・」と相手にもしないが
プー太郎も、コテツには目もくれない(笑)
(雌猫なのにね、コテツ・これもまたまたお気の毒な事です)


処がある日、脱走を試みた虎治郎と、正面切って対面したプー太郎
何か異様なムードが漂っていたのでしょう
外で、猫同士のなきごえがする
さては、さては、虎治郎、またまた脱走したな!
慌てて外に出てみると、プー太郎と虎次郎の一騎打ちの真っただ中
「どちらに味方したものか?」なんて悠長なことは言っていられない殺気を感じた


因縁の対決は凡そ20分、どちらも決して譲ろうとはしない
虎にしてみたら、毎日のプー太郎の所作には許しがたき心情ありあり
プー太郎にもそれなりの言い分はあったのでしょう
れっきとしたオス猫でしたからね
(みた処、去勢はしていなかったと、想定している)
猫にも、猫のプライド、その輩ですかね、人間様の出番はなさそうです


そのうち、どちらが諦めたのか、凡その想像はつきますが
フーテンの虎治郎は、何食わぬ顔付きで我が家へとご帰還
翌朝、いつもの塀の上でサル文様の背中を丁寧に毛づくろいをしている
プー太郎が、これまた何食わぬ顔付きでした


さてさて、両者の間で協議がなされたのか
時間切れとなったのか、その後、両者が顔を合わせても
一色触発なんてことは、次第に減ったようです


そのプー太郎はと申しますと
いやいや、あくまでも人間の怠慢からでしょう
去勢をしないオス猫は、何処でもドアを満喫しているだけでは事足りず
ふと・旅にでも出る、悪い癖があるような・・
それとも?
我が家にも一匹雌猫(残念ながらこの子は産めない猫です)がいますが
対象にはならなかったと言えます
ある時を境に、ぴたりと我が家の塀の上に姿が見えなくなった
ちと、寂し気に眺めているトラの姿を見る日が増えました
それから随分の時を経ても、結局サル文様は現れることがなくなった


時折飼い主さんにお聞きするのですが
「ふら~と出て行って、必ず戻る子と、戻らない子がいるからね」
何たる、自然体・・と唖然としました
それが、ある時
公園の中で、結構威張っている一匹の猫に出逢った
よくよく見ると、背中にしっかりサルの文様が・・
プー太郎・・思わず声にだして呼んでみる
その声を確かに聴いた筈、猫の耳が微かに上下したのだから
確かに、私と目を合わせた筈
でもね、月日は、すっかり彼から、あの頃の出来事が消えていたのでしょう
知らぬ、存ぜぬ風で、すたすたとその場を立ち去ったのです


フーテンの虎治郎は、飼い主のエゴを嫌ったかもしれないが
最後の、最後を看取ってもらった一生だったね
そして、プー太郎は、自由という名の元、どこかで一生を終えたでしょう
それを、寂しいね・・とは言わないでおきましょう



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